
近藤勇は幼い頃から大名になることを夢見ていた。
少年の頃の名前は、勝太。
武州南多摩の百姓の子であった。
あるとき、祖父から、先祖は武士であったということを聞いた。
男である以上、「自分には戦国武将の血が流れている。」と思いたい。
そして、武士になる日を信じていた。

幼なじみの百姓の娘「おえい」に恋をしていたが、
その娘は先祖の主筋にあたるため、
自分は家来だと言うだけで進展はしない。
勝太は、いかつい顔を恨めしく思い、
いつしか剣の道に没頭する。

おえいは、勝太を変なやつだと思いながらも、
その異相と異常行動に対し、気がおけなくなる。
近藤勇と名乗り、江戸へ修行に行く際、
おえいは自分の気持ちを整理出来なかった。
しかし、女中にめざとく感づかれ、釘をさされる。
・・・・「前略・・・あの子はもう村には帰って来ないよ。
年寄りがよく言うだろう。
昔から風変わりな顔つきのやつが村に残ったためしがないって。
あれさ、あの子も、ああ口が大きくては残れまいよ。・・・」・・・・
侍はこわい (光文社文庫)
強く思う夢は実現する。
京都へ行き、世を旋律させ、大名級の存在となり、
そして破滅の道へ...
昔恋した幼なじみの住む村を大名駕籠に揺られながら何を想っていたか。
甲州城に向かう近藤勇にはもう名残惜しむものはなかっただろう。



